大判例

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最高裁判所第一小法廷 昭和41(オ)712 判決

主 文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理 由

上告代理人小河虎彦、同塚田守男、同松永芳市の上告理由第一点について。

原判決がその挙示の証拠関係により適法に確定した事実関係、とくに本件約束手

形の振出当時上告人市の市長であつたDが法令の制限内において上告人市を代表し

て約束手形を振り出す抽象的権限を有していたこと、右Dが約束手形用紙の振出人

欄の上部に市長の公印を押捺し、その振出人としての市長名の記名捺印、手形要件

の記載等をすべてEに一任して、右手形を振り出したこと、さらに被上告人がFか

ら右手形を取得するに先だち、いまだその受取人欄が白地で未完成であつた右手形

につき、右Dが、二回にわたり被上告人の代表者らに対して、それが市の公会堂新

築資材購入のために振り出された適法な手形であり、満期の到来する以前に現金で

決済する旨を確認したこと等の事実関係のもとにおいて、右Dの右手形振出行為が、

その外見上、上告人市の代表者の職務行為にあたるとして、民法四四条一項を適用

し、上告人に右振出行為にもとづく損害の賠償責任のあることを認めた原判決の判

断は、正当として首肯することができる。論旨援用の当裁判所の各判例(昭和三二

年(オ)第一二〇四号同三五年七月一日第二小法廷判決、昭和三四年(オ)第四八

四号同三七年二月六日第三小法廷判決)はいずれも本件に適切でなく、原判決には

所論のような違法はないから、論旨は採用することができない。

同第二点について。

市として約束手形を振り出して債務を負担する行為は、収入役の専権事項たる現

金等の出納その他の会計事務には属さず、一般の契約の締結行為等と同様に、これ

をなすべき場合には、市の一般的執行機関たる市長が市を代表してこれにあたるべ

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き事項であるとして、市長が法令の制限内において市を代表して約束手形を振り出

す抽象的権限を有することを認めた原判決の判断は、正当として是認するとができ

る。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用することができない。

同第三点について。

原判決挙示の証拠関係により、被上告人がFから本件手形を取得するにあたり、

同人に対し金一六四万八、八七〇円を支払つた事実を認定し、その事実から被上告

人がDの不法行為により被つた損害額は右支払金額に相当するものということがで

きると判断した原判決の理由説示は、正当である。論旨は、ひつきよう、原審の適

法にした証拠の取捨判断、事実の認定を非難するものにすぎず、採用することがで

きない。

同第四点について。

不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点としての被害者側が損害を知

つた時とは、単に加害行為により損害が発生したことを知つただけではなく、その

加害行為が不法行為を構成することをも知つた時との意味に解するのが相当である

ところ、被上告人がDの不法行為により損害を被つたことを知つたのは、本件手形

の満期に、上告人がその振出の事実を否認し、支払を拒絶した時ではなく、少くと

も、本訴において、上告人側が右手形の振出の無権限行為である所以を主張し、右

Dが上告人代表者としての当事者尋問において、その主張に照応する供述をした昭

和三四年一月二二日以降であるとした原判決の事実認定は、本件の記録に徴し、正

当として肯認することができる。論旨は、上告人が原審において主張しなかつた事

実を付加して、原審の事実認定を非難するものにすぎず、採用することができない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文の

とおり判決する。

最高裁判所第一小法廷

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裁判長裁判官 岩 田 誠

裁判官 入 江 俊 郎

裁判官 長 部 謹 吾

裁判官 松 田 二 郎

裁判官 大 隅 健 一 郎

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